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Posted: 23 Nov, 2014 @ 11:55pm
Updated: 24 Nov, 2014 @ 12:36am

何かのストーリーを物語る短時間のゲームが近年増えてきている。雰囲気ゲームと言われることもあるこれらの作品は、アクションゲームの形を取りつつ何らかのストーリーをプレイヤーに伝えることを大きな目的としている。それらのゲームはプレイヤーにゲーム世界に没頭しストーリーを味わってもらうために、それぞれ独自の趣向を凝らしている。たとえばPapo&Yoでは独特なアートワークと練られたパズル、Brothersでは作り込まれた世界と連続するミニゲームといった形で。これらの趣向こそが、この手の短時間ストーリーアクションゲームの大きな魅力にもなっている。今から紹介するNever Aloneもそうしたゲームの一つだ。それではNever Aloneに込められた独自の趣向とはどういったものなのだろうか?

それはこのゲームが「体験するドキュメンタリー番組」であることだ。ロバート・クリーブランド著の『クヌーサーユカ』というイヌピアット(アラスカに住むイヌイットのことをこう呼ぶ)の伝承を題材に作られたこのゲームは、イヌピアットが体験する吹雪がどんなものであるのか、イヌピアットが子供のころに親から伝えられたちょっと怖い話、イヌピアットにとって自然はどのような存在であるのか、といったことをアクションゲームをプレイすることを通じてプレイヤーに伝えようとしている。

ドキュメンタリー番組で「イヌピアットの人たちはこんな吹雪に遭遇します」や「イヌピアットの人たちは子供の頃に親からこんな話をされます」や「イヌピアットの人たちは自然をこのようにとらえています」などとナレーション付きで映像が流されても、視聴者はモニターの向こうの話としか感じることができない。しかしこれらのことをゲームとして伝えることはできないだろうか? ゲームであればこれらのことをモニターの向こうの風景ではなく、操作するキャラクターを通じて自分が体験することとして伝わらないだろうか? Never Aloneはそうした体験するドキュメンタリーをゲームというメディアを用いて成立させることに挑戦した作品だ。

そして「体験するドキュメンタリー番組」としてこのゲームは見事に成功している。アクションシーンでフクロウを捕まえるとその付近のことを題材にした1つのドキュメンタリー映像がアンロックされ、その映像を見ることで今自分がいるシーンへの感情移入が深まっていく。最初のうちこそ「どうしてゲーム中にドキュメンタリー映像なんて見なくちゃいけないんだ?」と半ば嫌々見ていたものの、気が付くとフクロウを見つけて次のドキュメンタリー映像をアンロックするのが楽しみになってきている自分がいた。

「これは新しい! ドキュメンタリー番組をゲームで表現すると、ここまで惹き込まれてしまうものか?」と驚かされた。ゲームで何か新しさを体験したい人、ヒストリーチャンネルなどのドキュメンタリー番組が好きな人におすすめのゲーム。あとJ・キャンベルの『神話の力』などの書籍が好きな人にも。こんなゲームをしてしまうと一番好きなドキュメンタリー番組、Terry Schappertの『WARRIORS』(邦題は『世界の最強武術を体得せよ』)もどこかの会社にFPSアクションとしてゲーム化して欲しくなる。

ではアクションゲームとしての出来はどうだろう? このゲームがイヌピアットのドキュメンタリーを目指していることもあってか、良くできているという水準にとどまる。無難に仕上げられている。プレイ感覚はLIMBOに近い。それにChild of Lightの移動シーン(強風&精霊操作)を組み合わせた感じ。パズル要素もパズルと言えるほどの難しいものではなく、アクションシーンはプレイヤーに体験を伝えるために作られているといっていい。

ただし終盤は少し難易度があがる。とはいえ何度か死なないとどう進行させていいかわからないという形の難しさであり、極めて限られた時間の中で正確な操作をしないといけない難しさではない。全編を通して崩れる床などの時間制限ギミックは多いが、どれも時間猶予は長めに取られている。

またこのゲームはシングルでは女の子とキツネの両方を切り替えながら動かして行くが、ローカルCoopの形で2人でそれぞれのキャラを動かすことも可能になっている。実際にCoopでプレイしたわけではないが、終盤の難易度は2Dアクションに慣れていない人には難しすぎるように感じた。1人がゲームに慣れている人で、もう1人が慣れていない場合、終盤までは楽しく遊べても終盤で行き詰まってしまうおそれがある。アクションはおまけでドキュメンタリーがメインなのだから、親子やカップルでプレイしてサクサククリアできるくらいの難易度であったほうが良かった。片方が何度もミスして詰まってしまうと、楽しくないものね。(ゲームをあまりしない人とのCoopを実際にやった方がいらっしゃいましたら、ぜひ感想を聞かせてください)

最後にドキュメンタリー番組としての評価を。映像に登場する話をするイヌピアットの人たちが装飾品こそイヌイット的なものを身に付けつつもJ.C.Pennyで買ったような服を着ていること、それとイヌピアットの持つ伝統や文化や精神をイヌピアットの人自らが現代社会の価値観を用いて説明していること、これらが奇妙な対比をなしていたのが強烈だった。制作者はそんなこと意識しなかっただろうけれど、今のイヌピアットの現実がダイレクトに伝わってきた。優れたドキュメンタリーって、制作者の意図を超えたところで、本当に大切なことを伝えてしまう力を持つよね。Never Aloneもそんな優れたドキュメンタリーの一つ。

上で書いた奇妙さは、原作の『クヌーサーユカ』は男性主人公が一人で世界を救う話になっているにもかかわらず(そしてイヌピアットたちは「一人で状況を打開する」という誰もが持つはずの力を尊んでいるにもかかわらず)、Never Aloneでは女の子主人公がキツネと助け合う話に(タイトルまで)変わってしまっている奇妙さにも繋がっているのだけどね。


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クリアまでの時間:
└4hrs
コンプまでの時間:
└4.7hrs
クリアにスポイラー(攻略情報)は必要か?:
└No(思い込みでドハマリしない限り不要)
コンプにスポイラーは必要か?:
└No(思い込みでドハマリしない限り不要)
難易度:
└普通(LIMBOをクリアできる人なら余裕)
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3 Comments
26 Nov, 2014 @ 3:24am 
@gipsydogさん
ありがとうございます。いいドキュメンタリーでした。

@mpy_garuさん
ありがとうございます。もしこのレビューがいいものに仕上がっているとしたら、それは私のレビューを好いてくださってフレンド招待してくれた方が多くいらっしゃるので、その方たちの期待に後押しされての部分が大きいように思います。
25 Nov, 2014 @ 9:12am 
レビューが上手い
24 Nov, 2014 @ 12:36am 
ドキュメンタリーの部分はとても興味深いですね。丁重なレビュー参考になりました。